2026年のノーベル賞発表が近づく中、睡眠研究の第一人者として名前が挙がる研究者の一人が、筑波大学の柳沢正史(やなぎさわ・まさし)教授です。
柳沢教授は、覚醒を維持する神経ペプチド「オレキシン」を発見し、その欠乏が睡眠障害のナルコレプシーにつながることを明らかにした研究で知られています。
2023年にはクラリベイト引用栄誉賞、2026年にはアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を受賞。ノーベル賞級の研究成果として、国内外から注目されています。
この記事では、柳沢正史教授がどんな研究者なのか、オレキシンとは何なのか、なぜノーベル賞候補として名前が挙がるのかを整理します。
柳沢正史は何者?筑波大学の睡眠研究者
柳沢正史教授は、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の機構長を務める医学・神経科学の研究者です。
現在の主な研究テーマは、睡眠と覚醒を制御する脳の仕組みの解明です。
筑波大学の公式プロフィールによると、柳沢教授は1988年、筑波大学の大学院生だった時代に、血管を強く収縮させるペプチド「エンドセリン」を発見しました。
その後、1991年に米国テキサス大学サウスウェスタン医学センターへ移り、研究者として活動。1998年にオレキシンを発見し、翌1999年にはオレキシンの欠乏がナルコレプシーを引き起こすことを明らかにしました。
2010年に筑波大学教授となり、2012年から国際統合睡眠医科学研究機構の機構長を務めています。
柳沢正史が発見した「オレキシン」とは?
オレキシンは、脳内で作られる神経ペプチドの一種です。
柳沢教授らは1998年、特定の受容体と結びつく未知の物質を探す研究の中でオレキシンを発見しました。
その後の研究によって、オレキシンは人や動物の「覚醒を維持する」うえで重要な役割を持つことが分かってきました。
簡単に言えば、眠っている状態から起きるスイッチというより、起きている状態を安定して保つための仕組みに深く関わる物質です。
この発見は、睡眠や覚醒を単なる生活習慣の問題ではなく、脳内の分子レベルで理解する大きなきっかけになりました。
オレキシン不足とナルコレプシーの関係を解明
オレキシン研究が特に重要視されている理由の一つが、睡眠障害「ナルコレプシー」との関係です。
ナルコレプシーは、日中に強い眠気が起きたり、本人の意思とは関係なく眠り込んでしまったりする症状を特徴とする睡眠障害です。
柳沢教授らは1999年、オレキシンの働きが失われると、動物にナルコレプシーのような症状が起きることを発見しました。
その後、人のナルコレプシーでもオレキシンが大きく関係していることが分かり、睡眠医学の理解が大きく進みました。
2026年のラスカー基礎医学研究賞でも、この「オレキシンの発見」と「オレキシン欠乏がナルコレプシーにつながることの解明」が評価されています。
なぜノーベル賞候補として注目されている?
柳沢教授がノーベル賞候補としてたびたび名前を挙げられる理由は、オレキシン研究が睡眠研究の分野そのものを大きく変えたためです。
ただし、ここで注意したい点があります。
ノーベル賞の推薦者や候補者に関する情報は、原則として50年間非公開です。そのため、「柳沢教授が2026年の正式な候補者である」と確認することはできません。
一方で、外部の学術機関や賞が「ノーベル賞級」と評価していることは確認できます。
その代表例が、2023年に受賞した「クラリベイト引用栄誉賞」です。
クラリベイトは、論文の被引用数や研究への影響などを分析し、ノーベル賞級とみられる研究者を毎年選出しています。
柳沢教授は、睡眠・覚醒周期に関する研究と、ナルコレプシーの原因に関わるオレキシンの発見によって、生理学・医学分野のCitation Laureateに選ばれました。
2026年にはラスカー基礎医学研究賞を受賞
さらに2026年9月、柳沢教授は米国のアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を受賞しました。
共同受賞者は、スタンフォード大学のエマニュエル・ミニョ教授です。
ラスカー財団は両氏について、オレキシンの発見と、オレキシン欠乏によってナルコレプシーが起こることを明らかにした研究を評価しています。
ラスカー賞は医学研究の世界で非常に権威のある賞の一つで、過去にはラスカー賞受賞後にノーベル賞を受賞した研究者も多数います。
ただし、ラスカー賞を受賞したからノーベル賞受賞が決まるわけではありません。
重要なのは、柳沢教授の研究が「睡眠の仕組みを根本から理解する研究」として国際的に高く評価されているという点です。
オレキシン研究は実際の薬にもつながっている
オレキシン研究は、基礎研究だけにとどまりません。
現在では、オレキシン受容体の働きを抑える薬が、不眠症治療薬として実際に使われています。
一方で、オレキシンの働きを高める薬についても、ナルコレプシーなどの治療を目指して研究が進められています。
1998年に発見された一つの神経ペプチドが、睡眠の仕組みの理解から治療薬の開発まで広がっていることが、オレキシン研究の大きな特徴です。
2026年ノーベル生理学・医学賞の発表は10月5日
2026年のノーベル賞は10月5日から12日にかけて発表されます。
柳沢教授の研究が関係する可能性がある生理学・医学賞は、最初の発表となる10月5日です。
ノーベル賞公式サイトによると、生理学・医学賞は10月5日午前11時30分(中央ヨーロッパ夏時間)以降に発表される予定です。
日本時間では同日夕方以降となります。
受賞者が誰になるかは発表まで分かりませんが、柳沢教授の研究が世界的にどのような評価を受けてきたのかを知っておくと、今年のノーベル賞を見るうえでも理解しやすくなります。
堀大輔の「ショートスリーパー」と柳沢教授の睡眠研究
当サイトでは以前、「1日30分睡眠」で知られる堀大輔さんについても紹介しました。
極端に短い睡眠時間が注目される一方で、そもそも人はなぜ眠るのか、睡眠時間はどのように決まるのかといった根本的な問いは、現在も完全には解明されていません。
柳沢教授が率いる研究グループも、「なぜ眠らなければならないのか」「眠気の正体は何なのか」という睡眠の根本問題を研究しています。
ショートスリーパーのような話題を考えるうえでも、科学的な睡眠研究がどこまで進んでいるのかを知ることは重要です。
柳沢正史の研究は「睡眠とは何か」に迫る研究
柳沢教授の研究を一言で説明すると、単に「よく眠る方法」を研究しているわけではありません。
オレキシンの発見を入口に、脳がどのように睡眠と覚醒を切り替えているのか、なぜ生物はそもそも眠る必要があるのかという、睡眠の根本原理を解明しようとしています。
オレキシンの発見から約30年。研究成果はナルコレプシーの理解や睡眠薬の開発にもつながりました。
ノーベル賞を受賞するかどうかとは別に、柳沢教授が世界の睡眠研究を大きく前進させた研究者の一人であることは、これまでの研究成果や国際的な受賞歴から確認できます。



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